「神は沈黙せず」読了

神は沈黙せず(上) (角川文庫)

神は沈黙せず(上) (角川文庫)

神は沈黙せず(下) (角川文庫)

神は沈黙せず(下) (角川文庫)

404 Blog Not Found:人もまた沈黙せず - 書評 - 神は沈黙せず にて紹介されていた「神は沈黙せず」を読んだ。あんまり面白かったから、この土日だけで上下巻読みきっちゃったよ。

今年読んだ本の中で、間違いなく最高傑作!

いや、ほんとだまされたと思って読んで欲しい。面白くなかったら私が買い取ります、ってぐらい面白いから。

書評については、弾さんのブログを参考されたし。以下は、大学生の読書感想文。

この小説は、神とは何か、そして多くの自称預言者によって生み出される様々な"神"を始めとした、「自分の信じたいもの」を信じて、それに翻弄される人々の話。その自分の信じていた神が、慈悲深く愛に満ちた神ではなかったとしたらどうなのよ、というテーマがある。

この本の落としどころは、「この世はコンピュータのシュミレーションであり、神はそのプログラマ」というところであることが早々に示される。ただ、それで終われば、哲学とプログラミングをかじった中学生の妄想レベル。神が何のためにシミュレーションをしているのか、そしてシミュレーション上の駒である人間がどう翻弄されるのか、そこらへんに興味があるひとはこの本を買えばいいんじゃないだろうか。

この本を読んでいて引き込まれた部分は、やはりこの世の中はシミュレーションである、というモデル(仮説)だった。自分も例に漏れずそういう考えを持ったことがあるんだけど、その仮説を超常現象に適用すれば確かにそう考えられるよね、っていう展開がとても面白かった。今まで断片的に考えていたことや、世の中に対して「それはおかしいだろ」と思っていたことが、それらを包含したスーパーセットとして綺麗に体系づけられていたことが、読んでいて胸がすくような感じがした。

ということは逆に、この本の提示する神の観念に真っ向から対立するような信仰を持っている人は、この本を読むとものすごく不快に感じるのかもしれない。まあ、そこは小説なので、あくまでそういう神という存在の見方をしたらこうなるよね、というエンターテイメントとして楽しめるのが大人の態度じゃないかしら。

ところで、この本では終始「何かを信じたい大衆が、何かを信じて」翻弄されている姿が描かれている。時にはそれが新興宗教であったり、あるいは天才小説家にしてネット上のカリスマであったり。その描写を見ていて、「馬鹿だなぁ」と少しでも感じてしまった自分が恐ろしい。大衆の中の一個人は、自分が何かを信じて、そしてそれに振り回されていることに気がついていない。あたかも自分の意思で動いている、と錯覚しているわけだ。自分の信じるものが正しく、その自分の信じるものの論理を信じている限り、世界はその論理によって理路整然と説明されてしまうのだから、自分が翻弄されていることを自覚することは不可能なのである*1

つまりは、この記事を書いているはやみず自身も、知らぬ間に何かを信じて、何かにだまされて、大衆の1個人として流れに翻弄されているのかもしれない、ということだ。こうして「神は沈黙せず」の感想をブログに書いていることも、作者にうまく踊らされているだけなのかも。

*1:この手の話については、マインドコントロールの実際も参考になる